十月 神無月、季節もようやく落ち着き始めました。
左党の方々、中でも日本酒党には楽しみの秋上がりの季節です。かく言う私もその一人であります。毎年今ごろになりますと、各地の蔵から ひやおろし なるお酒が出てまいります。冬から早春にかけて寒造りされましたお酒をひと夏寝かせまして、大気もひんやりし始める頃に、火入れをせず、ひやのまま詰めて出荷されます。ころ加減にま〜るくなり、山海の秋の味覚を引き立ててくれます。
14号となります今回は、平成17年度のお酒造りのレポートです。お世話になりましたのは、北九州・久留米市三潴にあります杜の蔵さん。お酒は純米酒。焼酎も造られています。
早朝より蔵におじゃましますと、既に酒米を蒸し始めていました。蒸し器の上には蒸気が立ち上り、香ばしさが漂います。蔵の一隅に藁むしろが敷かれ、蒸し上がった米が手早く運ばれます。ここからは総出の手作業、放冷(蒸米の荒熱を取る)→引き込み(蒸米を麹をつくる室に入れ、蒸米の塊をほぐす)→種切り(麹菌を蒸米に振りかける)→床揉み(適温まで冷ました後、種麹を均等につける)と続いて行きます。厳しくも手際の良い仕事が落ち着き、一息していますと、お酒を搾る作業が始まりました。搾ると一言で言いましてもいろいろ。
この日は酒槽(ふね)を使ったものと通称ヤブタと呼ばれる自動圧搾機を使う方法との二通りを見せていただきました。酒槽(ふね)を使う作業は、もろみ(お酒を搾る前、まだ溶けた米が混じったもの)を袋に詰め1つ1つ丁寧に内側に積み重ねて行くのですが、身体を二つに折っての上下の移動はいかにもきつそうです。
※以下、画像に触れると行程名称・説明がご覧頂けます。
その後、上から圧力を掛けて搾ります。午後蔵内では、明朝蒸す米を洗う作業が始まっていました。一見つながりなくバラバラの様に見える作業ですが、全て造りの中心である杜氏(酒造りにおける職人の親方)のもと綿密な計画によって進められています。蔵内は常に綺麗に掃除され、必要に応じお湯で殺菌され、水で流され気持ちの良いことこの上なしです。
次の日、前日搾った酒粕はがしとお酒の瓶詰めを見せていただきました。杜氏自ら輪の中に入っての作業は傍目には楽しくさえ見えました。しかし、酒造りは造り方によっては一月近くも費やし、全神経を傾ける厳しいものです。
私のおじゃました二日間では、全てを見せていただけるはずもありません。そんな中でも、時に厳しく、時には和やかに、美味しいお酒を造ろうと精進されている姿はしっかり見せていただきました。酒好きの一人としてお蔵訪問の機会を得られ、美味しいお酒をいただけることは嬉しいことです。
「酒は百薬の長」とも申します。
適度に飲むことは、心も身体もリラックスさせ、食もすすみ、かえって健康にも良い効果を与えるのかも知れません。
飲酒による社会問題が頻発する昨今、大人の良識をもって日本の大切な文化を守って行きたいものです。
(2006年10月 掲載)
※取材内容は掲載時によるものです。
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