11月の中旬他の取材で通りかかった田で、自然農法で育てた陸稲(古代米)を脱穀されているご夫婦に出会いました。笑顔で取材のOKを頂き、長い時間色々とお話をお聞きしました。偶然にも12号でご紹介した方と同じ自然農塾で学ばれたそうです。
ご夫婦は25年ほど前に大阪よりこの地に引っ越されて、前記の自然農塾で2、3年学ばれ、4年前から米作りと野菜作りをやられています。近くの農家の方から田を借り、今年は5種類の古代米を脱穀する作業までこぎつけました。周辺の田ではすっかり刈り取り作業は終わっており、知らずに「少し遅かったのですか?」と尋ねると、「本来は11月の新嘗祭に間に合うように作っていたものだから・・・・」なるほど。確かにそうでした。
詳しくお聞きすると、3日前からお二人で刈り取って干した稲穂を脱穀されていたそうです。4年目にして約130kgほどになるとのこと。「これで1年間暮らせます」と笑いながら・・・。
周辺の草刈りから始まり、その草は田の中へ。4月に苗代作り、6月に田植え、10月に鎌で刈り取り、1ヶ月干して脱穀。懐かしい昔ながらのやり方で米作り。でも最初からはうまくはいかず、籾(もみ)も「じか蒔き」でタイミングも悪く、雑草に負けてしまい30kgしか収穫できなかったそうです。
稲刈り後の籾は一粒づつ拾われ、四苦八苦のスタートだったそうです。でも翌年からは順調に生育し、自給自足の量を確保できてひときわの喜びを味わわれたそうです。「米って面白いですね〜。1粒が何百粒に増えるんですから」実感の一言。皆さんご飯粒を残したらダメです。収穫の喜びの裏には、大変な苦労があるんです。田舎育ちの記者もこの言葉は実感の一言でした。
でも、銀シャリもやっぱり旨い!1年間は収穫した古代米を主食にされるそうで、味の方を聞いてみました。「1年間かけて収穫した陸稲も、育てた喜びの味でひとしおですが、たまに外食したときの銀シャリも旨いですね」と言われていました。最近の米は古来の米から品種改良も進み、管理も良いこともあり年間通じて美味しくいただけるみたいです。
自然農法で育てた後は、田をお借りしている農家の納屋から借りてきた、年代物の「足踏み式脱穀機」と「唐箕(とうみ)」で昔懐かしい方法で収穫作業まで・・・当然完全無農薬。刈り取った米の味は格別のことと感じました。
余談ですが、稲刈りの時稲穂に絶滅種と危惧されている「かやねずみ」の巣が10個ほど見つかり、現存地域の地図に当地が登録されたらしいです。食の安全が取り沙汰されて時間が経ちますが、本来の食材のあり方は先人達がやっていた方法で食するところに行き着くんだろうと感じました。ご無理をお願いして、収穫された5種類の玄米を撮影させていただきました。ご紹介しておきます。
(2006年12月 掲載)
※取材内容は掲載時によるものです。
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