関西近辺には柚子の産地としてゆずの里を名乗る所がいくつかあります。その中から京都市右京区にある柚子の里 水尾に行って来ました。
JR嵯峨野線 保津峡駅を降り山道を歩いて40分ほどで辿り着く山里の村です。柚子1 当日は運良く水尾自治会バスの時間に間に合い、乗せていただきました(有料)。
山林を縫ってバスが走ること十数分、黄金色の実がいくつも成る柚子の木々に迎えられて到着。里はその柚子の黄色と色づいた南天の赤が鮮やかで、空気のうまい静かな佇まいです。
水尾は谷間で耕地面積は狭いのですが、条件に恵まれ昔から果樹栽培が行われていた所で、現在でも柚子と梅は特産品です。里内には柚子風呂や地元料理を提供する民宿が何件もあり、柚子の里らしい賑わいを見せています。
集落を抜けた辺りでパチンパチンと鋏の音が聞こえてきます。目指す柚子園は目の下にありました。柚子の木はどれも5メートル近くあります。その木にこれも5メートルを越えそうな梯子をかけて摘果します。
竹製の「いどこ」と呼ばれる籠を持って身軽に上って行くのは70歳を過ぎたおじいさん。
お歳など微塵も感じません。
籠には木製の鉤が付いていて、梯子などにひっかけ柚子を入れてゆきます。みるみる一杯になる籠、コンテナに移すと柚子の香りが広がりました。
大小さまざまですが、緑の小さな葉を付けた柚子は色あざやかで可愛らしいものです。実の可愛さとはうらはらに枝には鋭い棘があり、肘まである皮手袋は必需品です。
今年は気候のせいであまり良い出来具合とはいえず、木成りのまま腐るものもあるようです。多くは煮柚子、柚子酢、柚子茶、柚子味噌などの加工用にされます。
昔から冬至に柚子風呂に入れば、無病息災に暮らせると言われています。柚子風呂には半分に切った柚子を木綿の袋に入れて絞りながら使うのだそうで、柚子の皮に含まれる精油成分が温まった体をつつんでくれ、さわやかな香りがリラックス効果を生むのです。温かい柚子風呂、柚子酢でいただく鍋料理。柚子をお土産に今宵のたのしみを想い、冷えた身体も温まるようです。
(2006年12月 掲載)
※取材内容は掲載時によるものです。
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