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年も明け、酒造りもいよいよ佳境に入る頃、所謂”寒造り”の様子を見せていただく為、奈良県大宇陀にある酒蔵 久保本家酒造さんを訪れた。この蔵は”生もと造り”と言う古来よりの醸造法で醸される酒を、数年前に復活させた奈良では最初の酒造場です。

蔵のある大宇陀辺りは、万葉の頃から宮人たちが、狩りをし、野に遊んだ山間の田園地帯、また戦国の頃から織田氏の城下町として大いに栄え、伊勢・吉野などに通う街道宿場町の風情ある町並みも残る。社長の久保順平さんはそんな町並みの保存にも積極的で、蔵の周りも板塀で綺麗に囲ってある。江戸のころには十数軒もあったと言う蔵元も今は、久保さんともう1軒だけと言う。







母屋の客間に通された後、さっそく目的の”山卸し”櫂入れを見せていただいた。蔵内はヒンヤリとしてはいるものの例年に比べると温かいと言う。半切り桶一つに3人の蔵人が付き、杜氏の加藤さんの合図で摺り始める。桶のまわりを回りながら中の米をすりつぶす。4つの半切り桶をそれぞれ3度に分けて翌朝まで繰り返し、自然界の乳酸菌を育て、雑菌を排除して酵母の働ける健全な環境をつくる。そしてタンクに寄せられたあと酵母を入れ時間を掛けて酒母を育てる。生もと造りで出来た酒は昔ながらの米の旨味があり、辛さ、酸っぱさなどのバランスのよいしっかりした酒になると言う。





翌早朝、お米の 蒸し から放冷(蒸し米を冷やす)、床揉み、種切り(蒸し米に麹菌をつける)と麹つくりの様子も見せていただいた。酒造りには多くの行程があり、1日ではその全てを見ることは難しい。またの機会を愉しみに蔵をはなれた。

今回蔵で飲ませていただいた”生もとのどぶ”と言う酒。前出の生もと造りで醸されたどぶろく風のにごり酒。キレがよく、旨、辛のバランスもよく、燗にして飲むとすこぶる旨い。ぜひ一度、試していただきたい。
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