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近頃はやりの地域伝承野菜、たとえば京の伝統野菜、鎌倉野菜、北陸金沢の加賀野菜など、地産地消の合い言葉と共によく耳にとどいてきます。それぞれに決まり事があるようですが、中には同じ野菜が異なる地域で認定されたりもしています。そこで今回、浪速の伝統野菜のいくつか(吹田くわい・田辺だいこん・天王寺かぶらなど)を栽培されている、大阪府吹田市の平野農園さんにお話をうかがいました。





過去の取材でも色々とお世話になった農園です。毎週、火・木・土の3日だけ農園内で販売もされています。今頃は冬野菜の葉もの、蕪や大根それに自家製の漬け物も並びます。朝どりのみずみずしい野菜はその色つやにもはりがあって食欲をそそります。浪速の伝統野菜田辺だいこんもありました。





さっそく伝統野菜の伝承について、その難しさや問題点をお聞きしますと、作業中のトマトのポット苗を引き合いに話を進めてくれました。伝統野菜が伝統野菜であるためには代々正統な種を伝えること。まったくあたりまえの様ですが必ずしも守られているとは言えない向きもあるようです。平野さんのところでは、毎年農林センターから純粋の種を取り寄せ栽培されています。自家採種では交雑などで純粋な種を残すのは非常に難しいようです。

また、その種を蒔く土(もともとは土地土地の水や土などの環境がその地に合った野菜を育んできたのですが。)によっても出来が違ってしまう。土も伝統野菜の味や形に影響を及ぼすそうです。純粋な伝承をすれば、野菜の味も引き継がれ灰汁が強かったり、濃かったり個性が残るのだそう。それが伝統野菜の魅力のひとつ。土作りも大切な作業です。

また、平野さんが力を入れている吹田くわいは毎年白い花を咲かせるほどの純粋系統。以前他所で聞いた”くわいは原種に近くないと花を咲かせない”と言うことばを裏付けるものと納得しました。





今回掲載の写真は伝統野菜ではありませんが(ファーストトマト・きゅうり・白ネギ)小さなポットから苗を育てるのは、それぞれの野菜のもつ個性を最大限ひきだし味の良いものを育てる作業です。写真のトマトは正月に蒔いた種が発芽し、成長する過程でポットのサイズを変えて植え直し、電熱線を入れて保温し(サーモで管理)、第一花が開くのを待って圃場に定植するそうです。





ちなみにこの最初の花の果実が一番濃くて美味しいそうです。定植まではふた月半、摘果は六月です。このトマトの例一つから想像しても伝統野菜の栽培がいかに大変なものか。平野農園のように有機栽培だけでもやっかいなところ、手間ひまかけた野菜を提供いただける農家の方々に感謝しつつ日頃のを楽しみたいものです。

昨今、生鮮品の輸送・保管の技術が大きく進歩していますが、地産地消の観点からみても地域の伝統野菜は本来の性質のままに育てることが大切ではないでしょうか。

(2009.2.28)
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