数少ない日本原産の野菜に
蕗(ふき)があります。大きく分けて3系統、水ふき、秋田ふき、愛知早生ですが、今回は愛知早生。全国生産の上位をしめる
大阪ふきを取り上げます。もともと大阪ふきの起源は、貝塚の清児
(せちご)にあると言われていますが、現在はその隣町
熊取町が泉州地域における出荷量の半ばを占める産地です。そして、その殆どを2軒の農家で栽培しています。そのお一人、向井 利夫さん の畑にお邪魔しました。
一年の内、数ヶ月もの間流通している蕗ですが、本来の時季は春、四月・五月です。桜の季節と重なり、筍とも並ぶ旬の食材です。これより早くハウスによる促成栽培は、三月ひな祭りの頃から
一番ぶきがでますが、そのハウスの二番ぶき が出る頃に寒冷紗の覆いの下で育った
一番ぶきが最盛期を迎えます。向井さんによると、この蕗がハウスものよりも柔らかく、風味も良くいちばん美味しいとのこと。質・量ともにピークを迎えています。
流通は十月ハウス栽培の
秋ふきから翌年の六月まで前出の寒冷紗ものや、路地ものもまじえて半年以上に渡ります。
蕗は繊細な野菜で病害虫に弱く、霜の害も受けやすくて、殊に今年は雨が多く日照が不足し管理が難しい年だったそうです。三月に冷え込んだことも作柄に影響しています。とはいえ、この日の収穫はご両親、奥様、向井さんの4人で蕗一本一本を根元から かきとる 作業、色鮮やかに大きく育った蕗を次々にゴザの上に並べ、数十本ひと纏めに担いで荷台に運びご自宅の作業場へ。夜にかけて翌早朝の出荷の下準備です。
向井さんは三十年ほど前、当時主に栽培していたタマネギの不安定さから、少しずつ蕗の栽培に切り替えてこられ、ご自身なりの研究の末現在に至っています。多種の病気やアブラムシの媒介するウイルスも悩みの種で、一年を通して土作り、消毒など余念がなく、強い種(株)を得るため個人で種(株)専用の圃場もお持ちです。農業センターから入手した株を三年かけて育て、畑には毎年新しい株を植えます。畑は連作障害を防ぐため収穫が終わる六月以降、鋤き込み、湛水し、二ヶ月ほど夏の太陽にさらして秋に備えます。
収穫された蕗を見ますと、かきとられた根元から葉先まで1メートルを超えるものも少なくありません。鮮やかな緑、たっぷりと水分を含み新鮮そのもの。かつて横山ノック知事に命名された
”のびすぎでんねん”まさにその名の通り。
蕗の香も一面に漂っています。一番ぶきを収穫したあとには、まだ伸びていない芽があちこち残されていてこれらが一ヶ月後、二番ぶきに成長します。ただし食味は一番ぶきには敵わないそうです。それぞれの一番ぶきの前、二月には
ふきのとうの出荷もあります。
最近では、手間をいやがり、食卓にのぼることも少なくなった蕗ですが、旬のこの時季には是非、シャキシャキした食感と独特の香りを楽しみたいものです。
(2009.4.8)
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