たけのこの美味しい季節になりました。
関西では京都の山城あたりが有名な産地ですが、大阪にも京都に負けない美味しいたけのこがあります。大阪府の南、泉州・貝塚、和歌山県堺に近い奥貝塚の
木積(こつみ)の筍がそれです。
水間鉄道・水間駅を降りて高速阪和道の高架をめざして歩くことしばし、目前に竹林が見えてきます。木積の筍の多くは
朝掘りで早朝の市に出荷します(午前二時頃から掘り、五時の市に並ぶ)が、この日お邪魔したのは
昼掘り(午後三時頃から)をされている筍農家の 宮下 幸郎(みやした よしろう)さん の畑です。宮下さんは、旧制中学を卒業したあと地元の会社に勤務されるのと同時に兼業で栽培に携わってこられました。18才で始めた幸郎さんは、筍栽培三代目とのこと。当初お祖父さんの頃、この辺りはみかん畑だったそうで、もともと粘土質の山は和歌山辺りの水はけのよい山に比べみかんの出来は良くなかったので、良質な赤土に合う筍栽培に少しずつ切替えていったそうです。
筍の栽培には適度な保水性と栄養分の多い赤土粘土質の山が向いています。三代に渡って作り続けられた山の土は豊富な栄養と湿気を含み、深くやわらかな層をなします。土作りは年に3度有機肥料を施し、同じ山の赤土を掘り出して土入れし、11月には一面に米ぬかを入れます。イネ科の竹にはイネ科の米ぬかが ともごえ であることで効果が大きいのだそうです。また、山の地形も影響するそうで、お椀状の宮下さんの山は条件が良いのだとか。結果、近年は良質な
白子(しろこ)と呼ばれる筍が多くとれます。
余談ですが、米ぬかに関して面白い話をうかがいました。その一つは、米ぬかをまくと猪が好んで現れるのですが、宮下さんの筍畑は山手を通る高速道路よりも麓に位置し、それがガードの役割を果たし猪の被害を免れているそう。
もう一つは、泉州・貝塚は 水なす の産地でもあり、
地元では水なすのぬか漬けを大量につくります。
その為に米ぬかが不足し手に入れにくくなるとか。
産地ならではの苦労話ですね。
竹林に目を戻してみますと、親竹はほぼ3メートル間隔、1~2坪に1本で、先端は折られていて、中程より上に18~20の枝があり適度な日陰をつくり風の影響を少なくしています。地表にはここかしこひび割れがあり、細い割竹が差されていて、その下に筍があるのです。専用の鍬を入れて起すと、根元の真っ白い筍が出てきました。20センチ以上もある見事な白子です。テンポよく掘り起こされ地表に転がされて行きます。大小いろいろですが、奥様もいっしょにひろい集めて選別、箱入れ、と出荷準備が進みます。
最後にどの様な筍がおいしいのか訊ねてみました。一番はやはり、" 時間 ” 掘り出してから如何に短時間で口に出来るかと言うこと。朝掘りの筍が良いとされるのは、その日の内に口に出来ればこその瑞々しい鮮度。いろいろな条件で朝掘り出荷に対応できないこともあり、昼掘りをするグループもあるのです。とはいえ夕方近くに掘り翌朝に大阪の市場に並びます。3月半ばに掘り始め、この後4月、まだまだ作業は続きます。
(2009.3.30)
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