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那須酒造場、年間五百石のみ醸す手造りにこだわった親子三人の米焼酎蔵です。

熊本県人吉からくまがわ鉄道にゆられ田園風景の広がる中、多良木駅に到着。タクシーに乗り換えたどり着いたのは思っていたより小さな蔵。





ご挨拶の後、早速仕込みが始まる。

まずは洗米、木製の半切り桶の中にヒノヒカリ、昔ながらの手作業でみごとに手際よくいかきにあげられ水切り台に並ぶ。向かいの畑と白い米のコントラストが気持ちよい。

間もなく蒸しに入る。

今日は二次仕込みの掛け米、小一時間ほどで香ばしいにおいとともに蒸し上がる。ご主人と息子さんの息もピタリと放冷作業に移り、適度にさめた蒸米を奥様明美さんの待つカメに運びつぎつぎに投入。アッと言う間のことのように思われた。この作業を二回。





その後、麹室で出麹の様子を見せていただく。

この蔵は今では少なくなったモロブタでの麹作りをしている。モロブタからザルに移されて出麹されてゆく。繰り返すが、とにかく三人の息が合い丁寧で手際が良い。蒸留間近のカメから汲み取ってひとくちいただいた。うまい!今日は蒸留がないのが残念。次は是非、蒸留直後をいただきたい。

仕込みを終えてお茶をいただきながら明美さんのお話に聞き入る。大正六年創業、明美さんはお祖母さんの仕事を見ながら育ち、現在でも基本の繰り返しをふつうにあたりまえに続けているだけと言う。常圧蒸留6割、減圧蒸留4割を造る仕事には他の蔵には負けない自信があるとおっしゃる。すっきりとした減圧ものが多い中、常圧ものにもこだわり、旨い焼酎を造り続ける。今時は地元でも常圧ものは臭いなどと敬遠される向きも多く、大手酒造会社の減圧ものが手軽に飲まれている。昔ながらの甘く旨い常圧ものを燗でやるのが一番と言うご主人、造って飲めれば言うことなしとおっしゃる焼酎好きだ。最近では息子さんも積極的に造りに励み、ようやく焼酎造りを理解し始めたと言う。

モロブタ麹、カメ仕込み。銘柄は球磨の泉(常圧・減圧)

あたりまえの事ながら、造り手が酒を知り、売り手が酒を知る。安かろう悪かろうではない何も足さない平均的な旨い酒を造り続けたいと声をそろえておっしゃる。

また、那須酒造場では、マイ焼酎の注文も多く、多様な注文にも快く相談に乗ってくれる。知人に勧められていた抹茶焼酎の味はなかなかのものだった。伝統を崩しながら広がっていく焼酎。お話を伺いながら、昔ながらのガラで燗をつけた旨い米焼酎をチョクに注いでじっくり呑みたくなった。


※取材内容は掲載時によるものです。
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